ゴルフ会員権業界を取り巻く環境

〜 震災前と現状相場の比較 〜

20126月期】

 

東日本大震災から1年3ヶ月が過ぎましたが、被災地の傷跡が癒えないまま時だけが経とうとしています。

ゴルフ会員権業界にとっても、昨年3月の震災と今年1月の太平洋クラブの民事再生申請は、当然のことながら大きな影響を及ぼしましたが、実数値としてどの程度なのでしょうか。

 

今回のレポートは、震災前の会員権相場(2011.2)と現在の会員権相場(2012.5)との比較を3つの角度から検証いたします。

@   14県(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城)別の騰落率推移

A   価格帯別の騰落率推移

B   法人向け会員権(AIG総研推奨)の騰落率推移

 

参考指標となる震災前相場と現在相場の比較では、関東平均相場の騰落率は14.714県平均相場の騰落率は15.3という数値でした。関東および14県の平均相場は、震災後下落を続伸し、201112月で一度下げ止り、少しずつ反転し始めている状況下にあります。

では、まず14県(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城)の騰落率推移を観てみましょう。

 

 @ 県別相場の騰落率 

 

 


 

現在相場が震災前相場を上回った(震災前相場<現在相場)地域は該当なしで、14県とも全てマイナスと

なりました。

 

震災および放射能風評が最も影響すると思われた茨城は、震災前相場への戻し率が一番高い地域でした。

反対に震災前への戻し率が最も鈍い動きを示したのは、神奈川でした。

高額コースの多い東京は、騰落が激しく不安定な相場が続いています。

 

また、太平洋クラブ民事再生申請後に相場を下落せずに上昇させたのは、東京・茨城・千葉の3地域です。

次に価格帯別の騰落率推移を観てみましょう。       

 

 A 価格帯別相場の騰落率 

 

 

 

驚いたことに現相場が、震災前相場を上回っている(震災前相場<現在相場)価格帯があったことです。

11.23%UPを示したのが101300万円価格帯でした。

また、震災も太平洋クラブショックも影響せずに、震災前相場から一度もマイナス値を示さなかった価格帯は1〜100万円帯と101300万円帯でした。

この2価格帯は、ほぼ底値を迎えている価格帯に来ていると推察いたします。

        

大幅に現相場が震災前相場を下回った(震災前相場>現在相場)のは、唯一、301500万円価格帯(−16.97%)となりました。

14県の平均相場が軟調となったのは、301500万円帯の低迷が大きく起因したと云えます。

 


 

最後にAIゴルフ総研が推奨する法人向け会員権の騰落率を観てみましょう。

 

 B AIG総研推奨コース別相場の騰落率 

 

 

 

法人接待向けの推奨会員権は、震災前相場から軒並み下落数値となりました。

 

日高CCは、太平洋クラブ民事再生後に相場が一旦急上昇しましたが、これは入会預託金を200万円から

100万円に減額した好影響が反映された結果です。

 

関東平均騰落−14%や14県騰落−15%に対して、震災前相場から−20%以上を示すコースは、全ては割安な会員権とは云えませんが、少なくともAIG格付評価の総合評価、経営母体評価、預託金問題評価、ネット予約評価がB以上の会員権については、リーズナブルな状況になってきています。

 

特に30%超となったレイクウッド、平塚富士見、狭山、キングフィールズは、経営母体や利用価値の観点からも割安感が強い会員権と云えます。

 

総じて震災の影響は大きかったと云えますが、太平洋クラブ法的整理による影響は軽微の様相でした。

 


 

【 総 論 】

 

太平洋クラブの法的整理は、幸いにも相場には大きな影響を及ぼしませんでしたが、ゴルフ会員権保有者や

購入希望者の方々に当然のごとく「一体、どこのゴルフ場を信用すれば安心なんだろう」という不安を煽ることになりました。

 

今後、ゴルフ場およびゴルフ会員権を見分ける方法の一つとして、次の論語の一節をご参考にして頂ければ、

信用できる良いコースか否かの判断基準を実感して頂けると存じます。

 

 

『其の為す所其の由る所其の安んずる所すれば、
人いずくんぞ隠さんや、人いずくんぞ隠さんや』  
〜論語(為政)〜

 

 

『その人の行動・行動の原因、動機・行動を支える思想、目的』を観察して推察すれば、どのような人間で

あっても自分の本性を隠しおおせることが出来ない、というような意味です。

 

人間の本質や人格を見極める方法を説いた篇ですが、ゴルフ場についても非常に参考になると存じます。

 

視ましょう!

そのゴルフ場のやっている行いを。メンバー重視の経営をされていますでしょうか。

ネット予約で、土日祝日でもメンバーにならなくても易々プレーできるコースでしょうか。

ゴルフ場のスタッフの挨拶は元氣で明るいでしょうか。

 

観ましょう!

そのゴルフ場の行いの動機は何でしょうか。メンバーをないがしろにした売上重視でしょうか。

メンバーとビジターとのプレー料金の差はありますでしょうか。来場者の質の低下はありませんか。

コースメンテナンスに予算をかけているコースでしょうか。

 

察しましょう!

そのゴルフ場はどこを目指しているでしょうか、どんな目的のためにやっているでしょうか、

どんな理念を持って経営に取り組んでいるでしょうか。

 

この視・観・察の三段階の観察法をゴルフ場にあてはめてみると、自然と

会員価値のある会員権、資産価値のある会員権、利用価値の高い会員権、生き残れるゴルフ場の見極めが

より分かり易くなると存じます。

 

 

AIゴルフ総研事務局:川島利彦、柳肇、品川なつみ)