【2010年12月期】 2010年の日本の世相を表す漢字1文字は、「暑」と発表されました。 2007年「偽」⇒2008年「変」⇒2009年「新」⇒2010年「暑」と変遷しています。 AIゴルフ総研が選んだ2010年のゴルフ業界の漢字1文字は、「耐」。 何故ならば、「耐」による明暗の2極化が顕著に表れた1年だったからです。 *
「耐」その1:猛暑の影響を受けた寒冷地型洋芝の明暗 *
「耐」その2:日本経済に連動した厳しい集客営業に直面の明暗 *
「耐」その3:様々な「耐」の経験を2011年の糧とする明暗 このように現在のゴルフ業界を取り巻く環境は、様々な2極化が進んでおります。 「コース投資・改善」の2極化、 「メンテナンス予算」の2極化、 「資産価値」の2極化、 「会員と非会員の差別化」の2極化、 「ホスピタリティ」の2極化、 「食事の料金」の2極化 等々。 何事においても、 時代の変化とともに、変わらなくてはならない部分と時代が変化しても変えてはいけない部分があると存じます。 ゴルフ場でも、サービス多様の時代であれ、変えてはならない普遍的なサービスがあります。 2010年最後のレポートテーマは、 「ゴルフ場のあるべき姿〜ずっと変わらずに大切にし続けること〜」。 最初に結論を一言で申し上げると、 会員・ゲスト・ビジターを迎え入れるための『万全の準備をソフト面とハード面で整える』ことです。これがゴルフ場の大切な役割であり、守るべき使命でしょう。 サービス業としてのあらゆる準備力、この事の大切さを痛感した2010年でした。 準備万全のコースとコスト削減の行き過ぎによる準備不足を露呈させたコースが歴然としました。 その結果、変えてはならない大切な事を改めて気付かせてくれました。 安くて一度はプレーしてくれても、コンディション面やサービス面での手抜きを感じれば、二度とプレーしなくなる可能性が高いことが、飽和状態にあるゴルフ場に突きつけられた現実です。 【コースコンディション】 ゴルフ場はメンテナンスの行き届いた状態を提供することが大前提です。 今夏の猛暑は、暑さに弱い寒冷地型ベントグリーンに多大な影響を及ぼしました。 今年ほどゴルフ場のメンテナンスへの取組み方の差が大きく生じた年はありませんでした。 ゴルファーにとって、やはり、フィールドに立った時、「綺麗」、「気持ちいい」と感じられる感覚が大きな楽しみの1つなのです。 コスト削減も大切ですが、コースメンテナンス費用の適正な予算組み込みも重要です。 水はけなどの見直し、水の十分な供給の確保、除草剤などの芝のコンディションを整える為の使用量の見直しなどが迫られています。 異常気象と不景気という過酷な状況下においても、ゴルフ場の経営姿勢が良いところや体力のあるところは、対応対策も早く、改善回復されるともに信頼を得ています。 しかし対応対策が遅れているゴルフ場は、ダメージも大きく、理想のコンディションを取り戻すのにはかなりの年月と費用が必要となっています。 【キャディ】 今、改めてキャディの重要性が見直されています。 スロープレー問題の改善、安全対策の配慮とクラブライフの充実が目的です。 セルフプレーの不満理由の一つは、プレー時間の増大がストレスになっていること。 ゴルフはリズムが大事。ハーフ3時間を越えて二度と行きたくないとの声を本当に良く耳にするようになりました。 もう一つの理由はコースが荒れてしまうことです。 適正以上の集客やマナーを知らないゴルファーのセルフプレーの結果、目土やディポットの修復などないに等しい荒れ放題のコースを生み出します。 安くプレーできるようになったのは良いが、気持ち良く楽しくプレーできなくなったのです。 セルフプレー制から完全キャディ制の導入に切り替えるコースが出てきたのも、セルフプレーによる弊害となった来場者の減少に歯止めをかけるためです。 【会員・ゲスト・非会員】 土日祝日は、会員と同伴するゲストのみに限定し、非会員は平日のみ受付けることが、メンバー制ゴルフ場の守るべきことでしょう。 ※「ゲスト」・・・会員同伴や会員紹介のプレーヤー ※「非会員」・・・会員同伴や会員紹介の無いプレーヤー 会員と非会員のプレー料金の差が少ないゴルフ場は、メンバーシップゴルフ場としての価値を著しく損ないます。会員、ゲスト、非会員という3種類プレーヤーに対する料金体系の差別化の徹底が必要です。 ゴルフ場の中には、この単なる「非会員」を優先しているところが見受けられます。プレー料金も会員とほぼ変わらず、土日祝日にもプレーをさせているため、パブリック化しています。 その結果、年会費支払い義務のある会員は「会員である意味がない」と不満を懐き、売却の動きとなりますが、そのような会員権は、売り一色の相場気配になり、当然、会員権の資産価値が減少し続けてしまいます。 会員稼動率の活性化のために、同伴ゲスト割引特典の環境を整備することが重要です。 ゲストの料金が高すぎると会員も同伴しづらくなり、足を運ぶ回数も減ってしまいます。 非会員に安く提供するのであれば、その分は会員同伴ゲストに還元して、もっと会員特典を充実すべきです。 【時代の変化とともに変わらなくてはならないもの】 二重課税であるゴルフ場利用税は、撤廃すべき、変わらなくてはならないものの代表です。 遅々として進まないゴルフ場利用税の廃止の署名数は130万人にのぼります。 驚くべきことに、全世界100種類のスポーツ種目の中で唯一、日本だけがゴルファーに対してスポーツ課税を徴収しているのです。しかも消費税との二重課税です。 ゴルフ利用税はプレーヤーが1名で800円〜1,200円負担しています。年間3万人来場する規模のゴルフ場で年間約3,000万円の税金です。 もともと利用税は許認可などの費用やゴルフ場への道路整備などの目的で徴収されておりますが、現在、許認可など無いに等しい状況では徴収する必要はありません。 徴収される意味のない税金は廃止し、ゴルファーの負担を少なくする、許認可を認めたゴルフ場へ還元する、等に変更すべきでしょう。仮にゴルフ場利用税の資金がゴルフ場に還元されるのであれば、メンテナンス費用、有用な肥料や薬品の開発、芝の品種改良への開発など、その方面の産業界的にも需要が生まれ技術的なことも進化すると思われます。 【 総 論 】 最後に、2,500年前から現在に至るまで生き続けている普遍の人生訓とされる「論語」の一節をゴルフ場に置き換えて締めくくらせて頂きます。 論語(顔淵 第十二) 紀元前の戦国動乱時代。 他国の侵略から守るための国家の大切な基盤となる3つは、食(食料)・兵(軍事)・信(信義)。 孔子は弟子の子貢に問われます。 この大切な3つのうち、どれかをどうしても切り捨てる事態となった場合、どれを捨てるべきかと。 孔子は、まず、軍備を捨てると答えます。その次は、なんと、食料を捨てると答えます。 食べるのさえ大変な時代に「食」よりも「信」が大切だと喝破しているのです。 『民、信なくば立たず』(民無信不立) 最後まで守らなくてはならないのが「信」。最後の最後に頼りになるものが「信」。「信は(国家の企業の・ゴルフ場の)力なり」。「信」とは、言ったことと行っていることの言行一致。 良心を失ってまで、人の信用を失ってまでのものは存在しない、という事なのでしょう。 現在のゴルフ場に当てはめると、食料=ゴルフ場スタッフの報酬環境、軍備=ゴルフ場人材配備。 では、「信」のあるゴルフ場とはどういうコースでしょうか。シンプルに考えれば、 ゴルフ場スタッフが、自社に「信頼」と誇りを持って、サービスに従事している、 メンバーが、ゴルフ場を「信用」して、メンバーであることに誇りを持っている、 ゲストが、また来たいと感じるハード&ソフトサービスが存在する、ということでしょう。 冒頭で2極化の話に触れましたが、 2011年に差が大きく生じるのはこの「信」の2極化ではないかと推察いたします。 ゴルフ場スタッフとメンバーからの「信」で支持され、氣のエネルギーが集まるゴルフ場と ゴルフ場スタッフとメンバーからの「信」が揺らぎ、氣が抜けたゴルフ場。 最高のコースコンディションと最高の笑顔のおもてなしでお客様を迎え、 やはり、「来る人には楽しみを 帰る人には喜びを」を実行・実践することが、リピートにつながり、会員権相場にも連動すると確信致します。 今後は、 メンバーに支えられるゴルフ場として、 多くのゴルフ場スタッフを支えるゴルフ場として、 そして多くのお客様を迎え入れるゴルフ場として、 理念や使命と云う「芯」がビシッと通ったコースのみが、 多くの「信」を得て、 「真」のゴルフ場のあるべき姿をみせてくれることでしょう。 (AIゴルフ総研事務局:川島利彦、柳肇、品川なつみ) |