ゴルフ会員権業界を取り巻く環境

200912月期】

 

日本の世相を表す漢字1文字が「新」と発表された2009年が幕を閉じようとしています。

 

現在、世界経済においては株高基調で騰勢が続いています。日本の株式事情は、民主党が圧勝した今年の8月末から12月にかけての株価の回復率は悪く、主要20カ国の中で唯一のマイナス国になっています。今年の3月に記録したバブル後最安値の平均株価7,054円からは、ようやく1万円台まで回復しましたが、海外に比べ1人取り残されている状況です。

(日本▲3.7%・ロシア27%・中国20%超・ブラジル20%超)

 

現在のゴルフ業界を取り巻く環境は、日本経済の二重底へ向かう懸念に連動していると云えます。

 

全国ゴルフ場の入場者数は、前年比0.78%増と横ばいの推移を見せています。しかし総務省の発表した消費者物価指数による全国ゴルフ場プレー料金の物価指数は−4.2%と大幅下落となり、6ヶ月連続で減少しています。生鮮食品を除く指数平均は−2.2%であり、ゴルフ場のプレー料金は、平均指数の約2倍の値下がりという厳しい局面が続いています。

 

ゴルフ会員権相場の推移に目を移すと、関東圏ゴルフ会員権平均相場(498コース対象)の20091月と12月の比較では6.1となっています。(20091218日現在)

 

相場全体で括れば、−6.1%ですが、別角度から詳細を紐解くと、別の事実が浮き彫りにされてきます。

2009年を締めくくるレポートとして、今回は弊社のゴルフ会員権格付評価の観点から今年のゴルフ会員権を分析させて頂きます。

 

 AIゴルフ総研 ゴルフ会員権格付評価の概要 

  

★ ゴルフ会員権をS・ABCD5段階の格付評価に分類

★ 総合評点は、最高100点 〜 最低−40

★ S10090点)・A8970点)・B6950点)・C4930点)・D29点以下)

★ ゴルフ場を10項目評価

@経営母体                      A抵当権状況                      B18H換算会員数 

C会員名簿発行                 D会員予約権利               E名義書換料と相場の兼合い 

F預託金返還の危険性     G過去最高値からの騰落率     H1年前相場からの騰落率 

I県別平均相場との比較

    (※特に@・A・D・Fを重点項目として査定評価しております。)

 

下記の図は、格付評価分類で示した現在の各平均相場と年初比較の騰落率です。

 

 

この表から明白のように、格付Aと格付Dを比較するとゴルフ会員権の2極化が顕著に読み取れます。格付Aと格付Dとの平均相場の価格差は約880万円900万円・13万円)、格付Aは格付Dの6.4の価格です。

騰落率も雲泥の差を示しています(▲1.1%・▲25%)。


 

関東ゴルフ会員権平均相場価格は、B(平均240万円)とC(平均54万円)の中間にあり、会員権価格は、格付Bと格付Cとの溝が大きな節目になっています。

 

(尚、格付Sは6コースございましたが、全て譲渡不可の会員権であるため、前記表からは外しております。※東京ゴルフ倶楽部・東急セブンハンドレッドクラブ・相模カンツリー倶楽部・スリーハンドレッドクラブ・那須ゴルフ倶楽部・中条ゴルフ倶楽部)

 

この相場の2極化の原因はどこに起因するのでしょうか。

 

風格、来場者の質、コース管理、食事の差もありますが、弊社では、一番歴然とした差はメンバー重視の経営を貫いていることに尽きると推察します。

 

特に土日祝日にインターネット予約サイトからビジターのみでプレーが可能か否かが大きな分水嶺です。ネット予約サイトは、ゴルフダイジェストオンライン、イーゴルフ、パー72、楽天GOR、アルバの大手5社があります。

前述予約サイトの5社のうち1社からでも土日祝日の予約が可能なコースを格付評価分類で調査すると下図の結果になりました。 

 

当然の事ながら格付Sは皆無。また格付Aの中に予約可能なコースもありましたが、預託金返還を実施し、別の意味でメンバーに対し経営責任を果たしているので高い評価を保っていることを物語っています。

格付C・Dに関しては、ほとんどのコースが会員権を購入しなくても、プレー可能と云えます。

格付Bについては、予約不可コースは格付Aに近い会員権、予約可能コースは格付Cに近い会員権と云え、ビジターのみでのプレーの可否が大きな分岐点になっています。

 

現在は、不景気の煽りを受けてはいますが、間違いなく、今後、徐々に会員権の資産価値が高まっていく会員権(格付S・A・Bの上)と会員権の資産価値が下落・喪失し続けていく会員権(格付Bの下・C・D)の2極化現象が拍車をかけていくと考察しております。

 

 

最後にゴルフ業界における2009年の漢字一文字を考えてみましょう。

2009年の「新」は、プロゴルフツアー業界にとっては石川遼選手を始めとする若手プロゴルファーの新星の台頭、新世代交代、新しい賞金王誕生という意味では「」といえます。

極端に云えば、「」の一字でも良いくらい石川選手の活躍ぶりには目を見張るものがありました。

 

しかし2009年のゴルフ場・ゴルフ会員権業界の世相には「新」は合いませんでした。

」・「」・「」・「」というマイナスイメージが強かった1年でした。

 

しかし厳しい情勢下でも、預託金を規定通り返還しているコースや会員重視の経営のコース、一人でも多くの来場者を獲得するために独自のサービスを改善実施したゴルフ場にとっては、「」・「」・「」の2009年となっていることでしょう。

そして魅力溢れるゴルフ場を目指している経営会社にとっては、2010年は」・「」・「」の1年になるのではないでしょうか。