ゴルフ会員権業界を取り巻く環境

200812月期】

 

日銀が発表した12月の企業短期経済観測調査も、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数がマイナス24となり、国内景気がいよいよ冷え込んできました。

今年度下期には世界のトヨタの営業損益が赤字に転落するという発表、ソニーが全世界で16,000人の人員削減実施という発表や今年の新車の国内販売台数がオイルショック以来となる34年ぶりの低水準に落ちこむ見通しになるというのは、実に象徴的な出来事です。

 

グリーンスパン前FRB議長が、「100年に1度の危機」と表現している米国金融危機に端を発した世界景気の減速懸念が、2008年度の日本のゴルフ会員権市場を大きく直撃した1年となりました。

 

日本は世界第2位のゴルフ大国です。(ゴルフ場を有する世界198カ国対象)

そして約9割以上が会員制ゴルフ場、かつゴルフ会員権が資産価値として流通する市場があるという、世界から見ても独特の文化を持つ国です。

世界第1位はアメリカの15,590コースで世界のほぼ半数をアメリカが占めています。

日本のゴルフ場の約6.6倍にも登りますが、大半は大衆向けのパブリックコースであり、国土も日本の24倍もありますから、やはり日本のメンバーシップ制ゴルフ場の供給過多は否めません。

 

日本のゴルフ会員権市場というのは、世界でも稀なシステムですが、資産価値として換金できる流通市場が確立されていることは、個人や法人にとって重要な役割を担っている市場と云えます。

弊社AIゴルフ総研の調査による関東信越ゴルフ会員権平均相場(532コース対象)は、20081月と200812月との比較では騰落率26.5を示しました。

 

バブル期から現在に至り、日経平均および関東ゴルフ会員権相場平均の最安値は、

2003年度に記録しています。今年度は、2003年度よりも株価も会員権相場も多少上回ってはいますが、実質のゴルフ会員権相場市場の売買は、当時よりも冷え込んでいます。

2003年は、取引相場金額は別にしても、市場売買は活発の様相を呈していました。

 

《バブル期全盛と2003年および2008年の会員権相場比較表》

(※日経平均株価:2003331日終値/20081031日終値)

(※関東ゴルフ会員権平均:関東ゴルフ会員権協同組合発表値・331コース対象)

 

大手企業では20013月期から金融商品の時価会計に伴い、ゴルフ会員権の時価評価が導入されました。この減損会計導入に伴い不要会員権の大量処分が行われ、その結果、企業が保有されるゴルフ会員権数は激減しました。

 

よって20012003年にかけての相場急落は、特に大手法人による会員権の多量売却の影響を受けたものでした。しかし現在は、各企業の保有会員権の整理も終わり、法人の売り物件も極めて少ない状況下で相場低迷を彷徨い続けています。

 

実際にプレー目的で会員権を購入しようと検討しているゴルファーからすれば、この数ヶ月間の会員権相場の低迷は購入のチャンスでしょう。

経営母体の安定しているゴルフ場やメンバー重視の経営を貫いているゴルフ場の優良銘柄会員権のみは、再び実需による買いが増え、緩やかな相場上昇傾向に向かうと思われます。

 

特に優良高額コースの下落に関しては、決してゴルフ会員権の真の価値が損なわれたわけではありません。生活必需品の値上がりや企業の生産や設備投資の抑制などの心理的かつ経済的要因が強く影響し、会員権価値は必要以上に下がっていると推察致します。

 

反対に、会員制ゴルフ場を形骸化させパブリックコースと化してしまったゴルフ場は、メンバーになる価値やメリットはほとんど無くなり、ますます資産価値が極小化していくと推察します。確かにパブリック化したゴルフ場の会員権価格は、安く購入しやすい買い物になっていますが、果たして良い買い物であるかは甚だ疑問です。


 

大切な資産の一つであるゴルフ会員権のコースが、土日祝日もインターネット予約サイトから一般ビジターの予約が可能では、会員価値の低減ばかりか、資産価値も保全されません。

前述のような会員権は、重要取引先との関係上で法人入会されているコース以外は、年会費の負担も含め保有している価値がないと云わざるをえません。

本来、会員制(・・・)を謳うゴルフ場の理念は、

「ゴルフ場はメンバーのためにある」に集約され、経営者もゴルフ場スタッフも、本当に一番大切にすべき共通の“価値観”であり“根っこ”であって欲しいものです。

 

景気変動に左右されやすいゴルフ会員権相場ではありますが、今後のゴルフ会員権は“ほんもの”だけが資産価値を生じる時代になると確信しています。

 

ここで云う“ほんもの”の定義とは、サービス業の真髄とも云える“来る人には楽しみを、帰る人には喜びを”与えられるものです。

今、ゴルフ会員権を購入するにあたり、入会する楽しみを、そして入会した後の喜びをメンバーに与えられるゴルフ場のみが“ほんもの”のメンバーシップゴルフ場です。

 

ゴルフ大国ニッポンの会員権業界および業界全体の再生・活性に繋がる“ほんもの”の会員制ゴルフ場が、2009年は一つでも多く増えることを心から強く念願します。